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下肢静脈瘤:日帰り治療が可能な複数の選択肢く

 この10年間に治療法が格段に進歩し、患者の選択に幅が広がった下肢静脈瘤。命にかかわることは少ないものの、痛みやかゆみ、こむら返り、あるいは見た目の悪さなどで生活の質(QOL)を低下させる恐れもあり、早めに的確な治療を受けたい。
「5年ほど前から、両足の後ろ側、とくにふくらはぎ付近の静脈が浮き上がり、気になっていました」と語るのは、東京都在住の主婦、三山慈子さん(70歳)だ。その後、症状は徐々に悪化。静脈がボコボコと浮き上がってこぶのようになり、毎週通っているフラダンスも「みんなに見られたくない」と気が重くない、楽しめなくなっていた。
 また2年前には、見た目だけではなく、就寝中に足がこむら返りを起こして激しく痛むなど、下肢静脈瘤特有の症状も出始め、耐え切れなくなって、治療することを決断したという。
 「傷がほとんど残らないと聞いていたので、最初からレーザー治療を考えていました」と三山さん。下肢静脈瘤の血管内レーザー治療で知られる東京の北青山Dクリニックを受診した。
 下肢静脈瘤とは、おもに下肢の皮膚表面に近い部分の静脈(表在静脈)が浮き上がったり、蛇行しながらボコボコとこぶのように膨れ上がったりする病気だ。進行するにつれて、下肢のだるさや痛み、むくみ、かゆみ、寝ているときのこむら返りなどの症状が出る。さらに重症化すると、足に黒色の色素沈着が起きたり、潰瘍ができたり、血液が固まる血栓ができることもある。
 足には、心臓から送られてきた血液を心臓に送り返す役割がある。下肢静脈瘤を引き起こす表在静脈は、その血液の通路の一つだが、血液が逆流しないよう、多数の弁が存在する。その弁が壊れ、障害を受けることによって血液が逆流し、静脈が拡張した状態が下肢静脈瘤だ。
 ただし、足には表在静脈のほかに、もっと大きな深部静脈と呼ばれる基幹静脈があり、表在静脈が逆流しても完全な血行不全になることはない。院長の阿保義久医師はこう話す。「遺伝的な要因のほか、立ち仕事を続けている人に多く、妊娠した女性にも起きやすい傾向があります。高齢になるほど増え、男性より女性に多く見られます」
 阿保医師の診断により、三山さんは、下肢静脈瘤の中でもっとも症例が多く、症状も多い「伏在静脈瘤」と、より小さな静脈にでき症状も軽い「クモの巣状静脈瘤」の混在型と判明した。しかし、クモの巣状静脈瘤は症状も見た目もさほど気にするほどではなく、本人が治療を希望していた伏在静脈瘤について血管内レーザー治療を施すことに決めた。約1週間後に再度来院し、治療することになった。
「治療時間は30分ほどだったでしょうか。痛みもなく、『もう終わったの』という感じでした。包帯を巻いてもらってその日のうちに自分の足で帰宅し、1週間だけ弾性ストッキングをはいただけ。見た目もきれいにほぼ治りました」と三山さんは振り返る。

レーザー治療も一部に保険が適用

 下肢静脈瘤には複数の治療の選択肢があるが、なかでも最新の治療法が血管内レーザー治療だ。阿保医師が解説する。
「患部の表在静脈の中にレーザーファイバーを入れ、静脈をレーザーで焼灼して閉塞させる治療法です。日本ではここ数年の間に広く知られるようになりました。当院では2005年に機器を導入して治療を始め、現在では年間2千肢近く、この方法で治療しています」
 血管内レーザー治療の利点は、施術時間は片足20~30分程度、入院することなく日帰りで治療を受けられ、からだへの負担が少ない。また、レーザーは基本的に針で挿入するため、切開の必要がなく傷痕がないことなどが挙げられる。
 とはいえ、レーザーは波長の長さで血管の処理能力が異なるが、保険適用が認められたのは波長980㌨メートルのもの。その後、1320、1470のものが開発され、現在の最新鋭機は2000㌨メートルだ。北青山Dクリニックも最新のレーザーを導入している。
「波長が長いレーザーほど、最小の照射熱量と最短の時間で治療ができます」(阿保医師)

QOL(生活の質)向上のための専門医療

【下肢静脈瘤】

◆ 下肢静脈瘤とは
 下肢静脈瘤とは、足の静脈が太く浮き出ていたり、瘤のように膨らんでいる状態。血液の逆流を防ぐ血管弁が壊れてしまうことが根本の原因。それによって血液が逆流し、血管を拡張させることで目に見える症状として表れる。遺伝や、立ち仕事をしていること、高い身長や肥満で足に負担がかかることなどが、弁異常の要因となるほか、けがから誘発されることもあります。妊娠・出産もかかわってくるため、男性より女性がやや多い傾向にある。
 患者さんが悩む理由の多くは、下肢静脈瘤による外見の問題ですが、中には足の痛みやこむら返り(足がつった状態)、足のだるさ・重苦しさなどのQOL(生活の質)を下げる症状をもたらす。重症化すれば皮膚潰瘍や血栓性血管炎のような病的な症状に至ることもあり、注意が必要。

◆ 幅広い選択肢から治療法を選択する
 治療は、ストッキングで圧迫する保存療法も行われているが、弁不全の存在が明らかな場合や、異常を自覚している場合、肉眼でも静脈瘤が確認できる場合などでは、希望に応じて原因を絶つための治療が検討される。
 かつては、医療機関は下肢静脈瘤の治療には積極的ではなかった。以前、治療として行われていたのは、原因となる血管を引き抜くストリッピング手術だけで、現在でも根治的治療として有用ですが、当時は入院を要し、外科的処置による侵襲も不安視されていた。直ちに生命を左右する病態でもないため、症状に悩む人が多いにも関わらず、医療機関が能動的に治療できなかった。それが、ストリッピング手術の改良で負担が軽減され、外来治療や日帰り治療が可能になったほか、別の新しい治療も開発されて選択肢が広がった。結果、こうした治療が広く受け入れられるようになった。
 中でも近年注目されているのが血管内レーザー治療。これは、血管内部に通したレーザーファイバーを通じて内部からレーザーを照射し、短時間で静脈を閉塞させる。針を通すだけで行えるため、大きな傷も残らずに痛みが抑えられ、外来の日帰り治療も可能。2011年より一部のレーザーは保険診療で行うことも可能になり、今後も期待される治療。他に血管内に硬化剤を注入する硬化療法も発達してきた。大きな症例や蛇行の激しい症例など、血管内レーザー治療だけでは治療できない症例に、硬化療法を併用して対応することもできる。これらの治療に、先に挙げたストリッピング手術や静脈を縛る高位結紮術も含めて、症状や患者さんの要望にあわせて使い分けていく。

◆ 普段から予防を心がけ発症の際には早期診断を
 不必要な治療を防ぎ、より適切な治療を受けるためには、下肢静脈瘤の診断・治療に長けた医療機関を選ぶことが大切。たとえば、レーザー治療は、信頼性がかなり高い治療だが、それでもトラブルが万が一起きた時に、外科や血管内科・外科との連携でバックアップできる医療機関で治療を受けることが大切。
 普段からの予防も大切。まずは、適切な運動で、血液のポンプとして働く足の筋肉の低下を防ごう。横隔膜の上下運動も血液を足から心臓に引き上げることができるため、深呼吸を普段から心がけることも効果がある。また、立ち仕事を頻繁に行う方は血管が拡張しないように足を押さえるストッキングを着用したり、血液に含まれる水分が減って粘性が高まりやすい夏場に適度な水分補給を心がけたりするなど、普段の生活の工夫も効果的。こうしたことを心がけても典型的な症状が現れた際には、一度医療機関に来院して診断を受けてください。