取材記事からの有益情報

下肢静脈瘤にレーザー治療 ストリッピングに代わる根治術、保険適用に

これまで自費診療で行われていた下肢静脈瘤の「血管内レーザー焼灼術」が2011年1月1日から保険適用となった。従来のストリッピング手術に比べて低侵襲であるため、軽症患者にも治療が広がりそうだ。
ふくらはぎなどの静脈がこぶのように膨らみ蛇行する下肢静脈瘤は、加齢とともに多発し、特に女性の発症が多いのが特徴だ。40歳以上の女性では、約10%に明らかな静脈瘤が認められるとされる。
主な原因は、皮膚近くを流れる表在静脈の逆流防止弁の破損だ。その結果、本来心臓へ戻るはずの血液が足の方へ逆流し、静脈が拡張して瘤状に膨れるなどの症状が起こる。
一度発症すると治癒することはなく、徐々に進行する。軽症例では美容上の問題が主だが、足がつる、足がだるいなどの不快感がある。 重症例では、皮膚炎や色素沈着、静脈鬱滞性潰瘍などを来す。
下肢静脈瘤の治療法には、静脈瘤の種類によって、いくつかの選択肢がある。比較的軽症で局所的な静脈瘤の場合は、硬化剤の注射で静脈を閉塞させる硬化療法や、体表からのレーザー照射などが適応となる。
しかし、表在静脈の本幹である伏在静脈瘤の弁が壊れ、血管が拡張・蛇行している場合は、それを除去するストリッピング手術が根治治療として第一選択となっていた。
これに対し、より低侵襲な治療法として注目されてきたのが血管内レーザー焼灼術だ。
血管内レーザー焼灼術では、伏在静脈瘤の膝下約5cmからカテーテルを挿入し、中にレーザーファイバーを通す。カテーテルを抜いた後、ファイバーを引き抜きながら血管をレーザー焼灼し、閉塞させる。これまで自由診療(25万円前後)で行われてきた。

ELVeSレーザーで保険適応
2011年1月1日から、この血管内レーザー焼灼術も保険適用となった。下肢静脈瘤治療が今回保険適用の対象になったのは、10年6月ににほんでの製造販売承認を取得したELVesレーザー(波長980nm、販売:インテグラル)を使用した血管内レーザー焼灼術。
なお、実施医は下肢静脈瘤の手術経験が50例以上、深部静脈瘤血栓症の診療経験が20例以上あること、実施施設には関連学会の専門医がいることなど、実施条件がいくつかある。
診療報酬は、12月22日時点でまだ決定していないが、ストリッピング手術の技術料や麻酔料などにファイバーなどの消耗品コストそ加えたものになると予想され、患者負担(3割)で5万から6万程度の見込み。

ストリッピングより低侵襲
ストリッピング手術も次第に技術が向上し、日帰り手術を行う医療機関も増えている、しかし、血管内レーザー焼灼術が約20分で済むのに対し、ストリッピング手術は1時間強。ストリッピングでは抜去部の疼痛や皮下出血もあり、伴走する新ケチの障害など術後合併症のリスクもある。レーザー治療だと、わずか数ミリの傷が1ヶ所のみで済むが、ストリッピングでは数か所の傷跡ができる。
このようにレーザー治療のメリットは多いが、欧米を中心に2000年ころから普及した新しい治療の為、10年以上の長期予後については明らかでない。また、再発率は実施医の手技や技量にも左右される。
05年からこれまでに、2500肢以上の血管内レーザー焼灼術を実施してきた北青山Dクリニック(渋谷区神宮前)院長の阿保院長は、「適切な手技で行えば、血管内レーザー治療はストリッピングに匹敵する。あるいはそれ以上の根治的治療になり得る」と話す。

新世代レーザーも好成績
今回保険適用となったのは波長980nmのレーザーだが、海外ではより水への吸収率が高い1320nm、1470nm、2000nmなどの新世代のレーザー機器が既に販売されている。これらは、個人輸入の形で日本にも導入されている。阿保氏は980nm、1320nm、2000nmの各レーザーを使った自院の症例合計531肢について、血管閉塞率や合併症の発症率などを調べたところ、2000nmのレーザーが最も良い成績だったいう。
2000nmレーザーでの手ごたえを感じている阿保氏は1月からは980nmレーザーでの保険診療と、2000nmレーザーでの自由診療の2本立てで治療を行っていくという。
「それぞれの治療法の利点や欠点を説明した上で、最終的に患者に選んでもらうことになるだろう」と話している。