下肢静脈瘤スーパーグルー治療

スーパーグルー治療とは

「スーパーグルー」とは瞬間接着剤のことを意味します。
「スーパーグルー治療」とは“医療用の”瞬間接接着剤を用いて病的な血管を処理する治療のことになります。スーパーグルー治療では、下肢静脈瘤の根本原因である壊れた大伏在静脈や小伏在静脈に、カテーテルを介してスーパーグル―を注入し血管内を瞬時に閉塞させることで病的な逆流を消滅させます。それにより血行が正常化して静脈瘤が消えていくのです。広範囲の局所麻酔が不要で治療中に血管内に熱も発生させないので、下肢静脈瘤の低侵襲治療として国際的に普及しているレーザーや高周波を用いた血管内焼灼術よりも、さらに体に負担がかからない次世代治療と言えます。欧米では、下肢静脈瘤の最先端治療として大変注目されておりこの数年間で急速に普及しています。

一般的に瞬間接着剤としては「シアノアクリレート」が用いられます。 医療用に用いられる瞬間接着剤もシアノアクリレートを基本骨格に持つため、スーパーグルー治療は、下肢静脈瘤の教科書ではCAE( cyanoacrylate embolization: シアノアクリレートによる血管閉塞栓術)と表現されています。スーパーグルー治療という呼び名はイメージがしやすいので一般的な治療名として普及しやすいでしょう。一方で、この治療キットを販売する機器メーカーは、Venasheal(ベナシール)、Variclose(バリクローズ)などの治療名を使用しています。北青山Dクリニックでは、スーパーグルー治療のことを、静脈(Vein)が閉じる(close)ことからVenoclose (ベノクローズ)と呼んでいます。

スーパーグルー

医療用のシアノアクリレートには、NBCA(nブチルシアノアクリレート)とOCA(オクチルシアノアクリレート)があります。両者の混合型OBCA(オクチブチルシアノアクリレート)もありますが血管内治療に用いられるのは、一般的にはNBCAとOCAのみです。NBCAは接着時間が非常に短いので下肢静脈瘤の治療で用いられる際には血管の処理が数十秒で終わります。それに対してOCAは処理時間が3分程度は要しますが仕上がりが柔らかいのが特徴です。 北青山Dクリニックでは接着時間が短く接着力が強いBCAを治療に主として用いていますが、医療環境の変化に応じてOCAを(ケースによってはOBCAも)応用することも検討しています。

スーパーグルー治療(ベノクローズ)の特徴として特筆すべきなのは、広範囲の麻酔が不要のため痛みが最小限(手術中は全く痛みを感じないように工夫しています)、治療時間が最短(正味数十秒で血管の処理が終わります)、そして手術後にタイトなストッキングの着用が不要(静脈瘤が大きい場合は1~2日程度着用をお勧める場合もあります)ということです。また、レーザーや高周波のように血管内に熱を発生させないので、神経障害などの合併症の発生頻度や程度がより小さくなります。血管内治療として先に台頭したレーザーや高周波に比べて、以上のような優位点をもつことから、スーパーグルー治療はその特徴を象徴してNTNT (Non Thermal Non Tumescent: 発熱が無く広範囲麻酔も無い)と呼ばれることもあります。それに対して、レーザーや高周波はTT (Thermal Tumescent )と呼ばれています。
北青山Dクリニックでは、先端的治療を導入する度に、患者さんの満足度調査を行っていますが、スーパーグルー治療においても患者さんの満足度が大きいことが確認されています。

院長ブログ:スーパーグルー治療後満足度調査結果はこちら


スーパーグルー治療のメリット・デメリット

メリットについて

・TLA麻酔(広範囲の局所麻酔)が不要なので手術時の負担が軽減されます。
・手術後に弾性ストッキングを着用する必要が原則としてありません。
・皮下出血や神経障害のリスクが血管内焼灼術よりも小さくなります。
・高周波による血管内焼灼術と比較した複数の試験で治療成績は良好です。
・NBCAを使用すると手術時間が極めて短時間(数分)で済みます。

デメリットについて

・レーザーや高周波治療に比べて長期成績報告がありません。
・巨大な静脈瘤や蛇行が激しく複雑なタイプの静脈瘤には不向きです。


スーパーグルー治療の安全性

NBCAなどのスーパーグルーを用いた治療は、脳動静脈奇形に対する塞栓術としてFDA(米国食品医薬品局)に承認され、1万例を超える使用実績があります。最近では胃食道静脈瘤に対する血管塞栓材としても国際的に広く用いられ、この治療は日本でも保険適用になっています。

脳や胃食道の血管内治療で問題ない実績が積まれていることから、スーパーグルー(NBCA、OCA)を用いた血管塞栓術は下肢静脈瘤の治療にも応用されるようになりました。 現在標準手術である血管内焼灼術と比べて、体に与えるダメージが少ないのに治療効果は同等であると報告されています。 スーパーグルー治療で用いられるNBCAやOCAは、無臭無毒、化学的に安定しており、有毒物質を発生することは無く発がん性もありません。

北青山Dクリニックでは、欧米で着手され出した2014年頃からスーパーグルー治療について情報を収集し、この治療により安全に良好な治療成績が得られたという論文報告が多数発表されたことを確認して、2016年後半より着手しました。 当クリニックで初めてスーパーグルー治療を受けたのは、当クリニックに勤務している看護師です。治療直後から仕事に復帰し、その経過を毎日確認することができましたが全く問題なく仕事と日常生活を送っています。スーパーグル―治療開始初年度の治療者数は年間100名程度でしたが、この治療を希望される方は徐々に増えています。

<背景論文 一部抜粋>

・Vasa. 2016;45(3):241-6.
N-butyl cyanoacrylate in the treatment of venous insufficiency--the effect of embolisation with ablative polymerisation.

・Surg Forum. 2016 Jun 20;19(3):E118-22.
Early-Term Outcomes for Treatment of Saphenous Vein Insufficiency with N-Butyl Cyanoacrylate: A Novel, Non-Thermal, and
Non-Tumescent Percutaneous
Embolization Technique.

・Phlebology. 2016 Mar 27.
A new non-tumescent endovenous ablation method for varicose vein treatment: Early results of N-butyl cyanoacrylate (VariClose®)

・Ann Vasc Surg. 2016 Oct;36:231-235.
Nonthermal, Nontumescent Endovenous Treatment of Varicose Veins.

・Phlebology. 2016 Mar;31(1 Suppl):106-13.
A prospective comparison of a new cyanoacrylate glue and laser ablation for the treatment of venous insufficiency.

・J Vasc Surg. 2015 Apr;61(4):985-94.
Randomized trial comparing cyanoacrylate embolization and radiofrequency ablation for incompetent great saphenous veins (VeClose).

・Phlebology. 2016 Apr 6.
Cyanoacrylate glue used to treat great saphenous reflux: Measures of outcome.

・Vascular. 2016 May 20. pii: 1708538116651014.
Cyanoacrylate closure of incompetent great, small and accessory saphenous veins without the use of post-procedure compression:
Initial outcomes of a post-market evaluation of the VenaSeal System (the WAVES Study).


下肢静脈瘤に関する海外の論文
https://www.varixlaser.com/paper/paper28.html
https://www.varixlaser.com/paper/paper27.html