監修医師:当院院長 阿保 義久

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは、下肢(かし)すなわち脚や足の表面を走行する静脈が、ぼこぼこと瘤(りゅう、こぶ)のように盛り上がったり、クモの巣や網目状に青や赤の血管が浮き上がったりする疾患です。基本的には自然に回復することはなく時間と共に徐々に悪化しますが一般的に進行は緩徐です。しかし、重症化すると潰瘍や血栓症などが発生し、治療に難渋する場合があります。非常に多くの方に発症することが特徴で、40歳以上の10%前後、妊娠出産経験者の50%に発症するなどと報告されています。潜在的な方も含めると相当多数の患者人口になるようです。見た目が気持ち悪い、温泉に行けない、短パンになれない、スカートがはけない、など患者さんの悩みは往々にして深刻なのですが、医療機関側ではあまり重視して取り上げてこなかった疾患とも言えます。


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下肢静脈瘤の原因と発生メカニズム

◆ 原因

心臓から脚に送られた血液の還流が正常に行われなくなることで引き起こされます。血液還流が正常に働かなくなる原因を整理すると、以下のようになります。

  • ① 下肢の筋肉が衰えている
  • ② 呼吸が浅いため、胸腔内の陰圧状態が不十分である
  • ③ 腹腔内圧が上昇している
  • ④ 血液粘度が濃い(いわゆるドロドロ血)
  • ⑤ 長時間の逆流負荷(立ちっぱなし)や過度な運動により逆流防止弁が壊れる

その他にも、肥満・背が高いといった体型、遺伝なども影響しています。
また、女性ホルモンの影響で血管硬度が柔らかく、瘤ができやすい状態にある妊娠・出産も原因になります。

◆ どのように静脈瘤ができるのか?

血管壁の構造

動脈も静脈も、内腔側から内膜、中膜、外膜の三層構造となっています。内膜は、結合組織により支持された血管内皮細胞で構成され、その内腔表面は滑らかで薄い被膜となっており、スムーズな血液の流れを維持するとともに大きな分子が血管から拡散するのを抑える役目があります。次の層は、中膜で、コラーゲン繊維や平滑筋細胞で構成され、3つの層の中で最も厚く、血管の弾力性をつくっており、血管の弛緩・収縮に最も重要な部分です。最も外層である外膜は血管の動きを支配する神経や血管に栄養や酸素を供給する非常に小さな栄養血管が存在しています。
また、静脈は動脈と異なり、内腔に弁があり静的な流れが逆流を起こしにくい構造になっています。まさに、動脈の中では血液は動的に速く流れており、静脈内ではゆっくりと静的に流れています。静脈はその伸展性の大きさから、〝容量血管″とも表現でき体内を循環する血液のうち70-80%を含んでいます。

静脈が拡張する理由

静脈が拡張する理由基本的には動脈と静脈は同様の構造を有していますが、一般的には静脈は動脈に比べて内腔が大きく、中膜が薄いため、拡張しやすい特徴があります。
静脈は、動脈同様、加齢とともに中膜の弾性線維が減少して血管壁の弾力性が低下し、平滑筋細胞の萎縮・変性に伴って膠原線維が増えて血管壁の硬度が上昇します。
静脈は、血流が静的であり、逆流防止弁があるために血管内腔への刺激が動脈に比べて弱いのですが、四肢の筋肉が弱って還流ポンプ力が小さくなったり、重力の影響による逆流圧を長い間受けているうちに、血管内の血流圧により血管内膜や中膜が傷つき、修復されます。それが、繰り返される度に血管壁は厚くなり、そもそも進展しやすい血管壁は拡張していくと考えられます。
女性ホルモンの一つである黄体ホルモンは、血管壁を柔軟にする性質があるため、妊娠などで黄体ホルモンの分泌が高まるとことさら静脈は進展しやすくなります。

逆流防止弁が壊れて、血管が拡張してしまう

私たちの体は、常に心臓を中心に血液を循環させることによって、体中に酸素や栄養を供給しています。
動脈を通じて心臓から足へ送り出された血液は、横になっているとき以外は重力の抵抗に逆らって心臓に戻ってくることになります。
足の血液を心臓に戻す駆動力として横隔膜、肋間筋などの呼吸筋やふくらはぎの筋肉が非常に重要です。呼吸筋の作用により胸腔内が陰圧になると、下肢の血液が心臓の方へ引き上げられます。 そして、足に溜まった血液を心臓に戻すうえでより重要な働きをするのは、ふくらはぎの筋肉です。それは、ポンプの役割をして、心臓から送られてきた血液を心臓へ押し戻します。ふくらはぎの筋肉が第二の心臓と呼ばれる所以です。
しかし、ふくらはぎの筋力は常に一定の力で静脈血を押し戻し続けているわけではなく、押す止まるを繰り返しています。押し戻す力が止まる時、静脈血は、重力により足先の方へと下がろうとします。

このとき静脈血が逆流しないよう防いでいるのが、静脈内部にある逆流防止弁です。下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、この逆流防止弁が壊れて、正常に働かなくなったために起きる病気です。逆流防止弁が壊れることにより、血液の逆流が起き、血管が拡張します。拡張した血管は、足の表面に太く浮き出たり、瘤のように膨らんだりします。そのように下肢にできる瘤(こぶ)が下肢静脈瘤です。

そして、実際にこの症状が発生する際には、表面の静脈が深部静脈に流入する場所の逆流防止弁が壊れることがきっかけになりますが、その壊れやすい場所は決まっています。
人が立った状態でじっとしているときには、筋肉ポンプはあまり働かず、血液が心臓に戻るスピードは遅くなります。しかし、心臓から送り出される血液は一定であるため、脚に多くの血液が溜まることになります(血液の鬱滞:うったい)。すると、静脈内の圧が上昇し、静脈も逆流防止弁に強い逆流圧がかかります。その負担が度重なると、弁は逆流圧に耐えきれず変形して、あいだに隙間ができ、血液の逆流が起こります。それが、進行すると弁は完全に壊れてしまい、逆流防止の機能を全く果たさなくなります(弁不全)。
そうなると、血液は大量に逆流して、脚の下のほうに溜まり、血液をため込んだ血管が引き伸ばされて、静脈瘤が作られてしまうのです。

逆流防止弁が壊れやすい場所

下肢の静脈は、解剖学的に筋膜の奥の筋肉の中にある深部静脈と皮下を走行する表在静脈に分けられます。表在静脈は脚の付け根と膝の裏で深部静脈に合流します。他に表在と深部の静脈は穿通枝と呼ばれる筋肉を貫く短い血管によってもつながっています。
表在静脈には代表的な2つの系統があります。1つは、足首の内側から下肢、太股の内側を通って鼠径部(太股の付け根)で深部の大腿静脈に合流する大伏在静脈です。もう1つは、踵(かかと)の外側からふくらはぎの真ん中を通って、膝の裏で深部の膝窩(しつか)静脈に合流する小伏在静脈です。これら2つの静脈は、多くの枝によってつながっています。

血液の逆流を防ぐ弁の中で壊れやすいのは表在静脈と深部静脈の合流点で、特に脚の付け根と膝の裏にある合流点の2か所に弁不全が生じます。

脚の付け根と膝の裏の他に弁が壊れやすい個所としては、不全穿通枝と呼ばれる表面の静脈と深部静脈のバイパス静脈の部分や、卵巣周囲の内臓の静脈などが挙げられます。


下肢静脈瘤の症状

人により症状はそれぞれ異なりますが、以下のような症状のある方は注意が必要です。
<足の各部位が>
こむら返り・だるい・重い・疲れる・ほてる・痛い・むくむ・かゆみ・色素沈着・潰瘍・皮膚炎等・・・。

外見上の問題

治療に訪れる多くの方は、血管が浮き出て気持ちが悪い、スカートがはけないなどの外見上の問題を訴えます。

だるい、重い、疲れる、ほてる

静脈瘤は、うっ血による静脈圧の上昇によって発生しますが、このうっ血(血液がよどんでたまること)により、これらの症状が作られます。

痛い

血液のうったいが進み、だるさ・重さがさらに進むと痛みとして感じられることがあります。

つる

(こむら返り)歩行時もしくは就寝中にこむら返りを起こすことがあります。血液循環が悪い証と言えます。

むくむ(浮腫)

静脈圧が高くなってしまったために、血管内から水分が外へ染み出ることにより起きます。

かゆみ

湿疹に伴うことも伴わないこともありますが、かゆみも静脈瘤の代表的な症状の一つです。

皮膚炎、湿疹

足首の周囲や静脈瘤の周囲に起きやすく、皮膚や皮下組織の栄養障害が進むと、皮下組織が繊維性変化を起こし硬くなります。

色素沈着、潰瘍

皮膚が弱く、静脈が拡張しているために何らかの刺激で皮膚、皮下に容易に出血を来します。血液の成分の中に含まれる色素が組織の中に沈着することがあります。また、皮膚が弱いために、傷ができやすく容易に潰瘍化します。皮膚の血液循環が悪いために、潰瘍は極めて治りにくく放置すると徐々に増大していきます。


下肢静脈瘤と紛らわしく誤解されやすい症状

下肢静脈瘤の典型的な症状である、足が疲れる、むくむ、つりやすい、しびれる、痛いなどの場合でも、次のような別の病気である場合もあります。

1. 腰椎椎間板ヘルニア
椎間板が本来おさまっているところからはみ出して、神経が刺激されることにより、しびれや痛みといった症状が脚に発生します。両脚が同時に症状を発生することは少なく、通常は片側のみの症状になります。
2. 閉塞性動脈硬化症
動脈硬化により足の動脈が狭くなったり、ふさがったりすることで、 末端組織の血行が悪くなり、しびれや冷え、足のつりや痛み、などの症状が発症します。
3. リンパ管炎
リンパの流れが悪くなることにより、下肢がむくみ、下肢の発熱、痛みが発生したりなど、下肢静脈瘤に似た症状が現れます。
4. 結節性紅斑
何もしなくても痛みを伴う紅班が、下肢に多発し、圧痛や倦怠感といった症状があります。
5. 慢性湿疹
皮膚に発疹が現れ、皮膚が厚ぼったくなったり、肌の色が汚い褐色になったりします。痒みも伴うことが多いようです。
6. 慢性色素性紫斑
比較的まれな症例ですが、かゆみ、色素沈着、炎症などといった症状が、下肢に出やすい特徴があります。
7. リベド血管炎
隆起はしませんが下肢に網目状などの皮班が生じ、痛みや潰瘍を伴い得ます。
8. 下腿筋膜ヘルニア
脆弱になってしまった足の筋膜(下腿筋膜)の内部が、瘤状に張り出すため、見た目が下肢静脈瘤と、よく似た状態になることがあります。
9. 皮膚潰瘍
長時間の立ち仕事の方に多く、下記の慢性静脈不全症と呼ばれる血行不全により、静脈瘤がなくても、皮膚硬化や色素沈着が起こり、悪化すると潰瘍を引き起こします。
10. 慢性静脈不全症
下腿の筋力低下などにより、静脈の還流障害が慢性化して、下肢に血液がうっ滞することによっておこり、症状は、下肢の腫れ、むくみ、痛み、しこり、湿疹、潰瘍、色素沈着など様々です。深部静脈血栓症の後遺症で静脈に狭窄が残ったり、バイパスとして新たに作られた血管が逆流をおこしたりすることも原因になります。
11. 深部静脈血栓症
いわゆるエコノミークラス症候群として注目を集めている症状です。肺梗塞や脳梗塞の原因になり得ます。静脈血栓症は全身の深部などのどの静脈にも起こり得ますが、その中でも下腿・大腿・骨盤内などの深部静脈で発症することが多いと言えます。
12. 先天性静脈瘤
下肢静脈瘤は、成人以降の発症がほとんどですが、子供の頃からあざや表在静脈が目立つ先天性静脈瘤の方もいます。先天性静脈瘤は、逆流圧が一般的には非常に強く、破たんする血管が複雑に発生し治療に難渋することが多いようです。ただし、必ず遺伝するものではありません。

下肢静脈瘤ができやすい人の特徴とは?

下肢静脈瘤は、近年、認知度は高くなってきましたが、皆に正しく理解されているとは言い難い血管疾患です。発症件数は、決して少ないものではありません。40歳以上の女性では、全体の約10%にあたる人に明らかな静脈瘤が認められるという報告が多数あります。 症状が軽いものまで含めると、30歳以上の男女では62%もの人に、静脈瘤が認められたという報告もあるのです。

特になりやすい方が、女性(出産の経験がある方の割合が高い)、高齢の方、遺伝的な要因で親族に疾患経験者がいる方が発症しやすいと考えられます。また、激しいスポーツ(フルマラソン、サッカー)を日常的に行っている方、高身長である方なども多い傾向にあります。

女性

相対的には男性よりも女性に多いといえます。

その理由は、筋力が弱く血液の還流力が弱いことの他に、妊娠出産が下肢静脈瘤の発症要因になるからです。妊娠時に分泌される黄体ホルモンが血管をやわらかくするため、静脈瘤が発生しやすくなります。第一子よりも第二子、第三子と、出産経験の多い方のほうが発症率は高いようです。

加齢

年をとって血管が弱くなると、逆流防止弁が壊れやすくなり、発生頻度が高くなります。

遺伝

親族に疾病経験者がいると、発生する頻度が高くなります。

立ち仕事

教師、美容師、調理師、看護師、客室乗務員など、一日のほとんどを立ちっぱなしで過ごす「立ち仕事」をしている人にも、多く発症します。

エコノミークラス症候群経験者

同じ状態での座りっぱなしも、発症の原因になります。エコノミークラス症候群の後遺症として下肢静脈瘤になる方もいます。

高身長

高身長で脚の長い方は血管が長い分、下肢静脈瘤の発症頻度が大きいようです。

マラソンランナー、サッカー選手

脚を激しく使うスポーツをしている方も、下肢静脈瘤になりやすいようです。


下肢静脈瘤の種類

◆ 大伏在静脈瘤

下肢の静脈は深部静脈系と表在静脈系に分けられ、下肢の血流のほとんどは深部静脈を介して心臓に戻ります。下肢の血行の一割くらいを担う表在静脈が静脈瘤をつくります。足にある表在静脈の中で、最も高頻度に静脈瘤を形成するのが大伏在静脈です。大伏在静脈は足首の内側から上行して足の付け根で深部静脈に合流する表在静脈です。その本幹および主要分枝に発生するのが、大伏在静脈瘤です。発生部位は下腿から大腿部内側、下腿の外側、大腿部の背側になります。

◆ 小伏在静脈瘤

小伏在静脈瘤は、大伏在静脈瘤に次いでよく見られる静脈瘤です。小伏在静脈はアキレス腱の外側から上行して膝の裏で深部静脈合流する表在静脈です。発生部位は大伏在静脈瘤と同様ですが、足首の後ろや膝の後ろになります。

◆ 側枝静脈瘤(分枝静脈瘤)

伏在静脈本幹から枝分かれした静脈が拡張してできたものを言います。主に膝から下の部分に見られ孤立性のことがあります。伏在静脈瘤よりやや細いのが特徴です。

◆ 陰部静脈瘤

卵巣や子宮周囲の静脈から逆流してきた血液により作られる静脈瘤です。そのため、月経時などで卵巣や子宮への血行が増えると症状が強くなります。ボコボコとした蛇行血管が足の付け根から太ももの裏側を斜めに走って下腿まで広がる場合は、陰部静脈瘤の疑いがあります。

◆ 網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤

網目状静脈瘤は細い皮下静脈(径2~3㎜)が網目状に広がっている静脈瘤です。もう一方のクモの巣状静脈瘤とは、網目状のものより細い真皮内静脈瘤(径0.1~1㎜)です。網目状、クモの巣状静脈瘤は伏在静脈瘤のようなぼこぼことした盛り上がりはありません。


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下肢静脈瘤の検査法

①ドップラー血流計

ドップラー血流計は、赤血球に超音波をあてて、血液の流速の変化を音としてあらわし、その音の変化によって、血管内で逆流が起きているかどうかを調べるものです。

万年筆より少し太い「ブローベ」という器具を、皮膚の上から血管にあてます。そうして、ふくらはぎを手でつかむように圧迫すると、血液が上に押し上げられて、ザッという短い音がします。次に手を離して圧迫を解くと、血液の逆流が起こっていなければ、音はしません。逆流があったときは、ザーッという長い音がします。

②カラードップラー検査

カラードップラー検査は、超音波を利用して、血液の流れを、カラー画面で表示するため、異常が視覚的にわかります。内臓のエコー検査と同等です。

ブローベを、皮膚の上から血管にあて、画面に映し出された映像で判断します。カラードップラー検査では、画像で血管の短軸像(輪切りの状態)と長軸像(縦に切った状態)を、観察することができます。血液の流れを色分けして表示するのみではなく、音や波形でも逆流の有無を表現できます。

その他にも、血管の内径を測ったり、血流の流速を測定したりすることもできます。画像で記録に残すことができ、ほとんど全ての下肢静脈瘤の診断はこの検査のみで可能です。

③容積脈波検査

血液の逆流を調べるのが、ドップラー血流計、カラードップラー検査です。

「容積脈波検査」は、足の静脈の機能を詳しく調べる検査です。

検査方法は、足に、マンシェットという空気で膨らませるカバーを巻き、つま先立ち運動をしてもらいます。足の運動による静脈の容積変化を調べることで、筋肉のポンプ作用や血液の逆流の有無がわかります。とても簡単で短時間でできる上に、痛みや苦痛がなくストレスのない検査方法ですが、どの部位に下肢静脈瘤が発生しているかはわかりません。


下肢静脈瘤の治療法

2011年以降、一般的な静脈瘤である伏在型のタイプに血管内レーザー治療が保険で実施できるようになってから、その治療を実施する医療機関が全国に広がりました。そして、2014年には、高い治療効果が期待される1470nmのレーザーや手術時間が短い高周波による治療も保険認可され、下肢静脈瘤の治療を専門とする医療機関が激増しています。いわばこの専門クリニック開業ブームが沸き起こっています。
そもそも、本疾患に対する根治手術としてストリッピング手術と呼ばれる血管を引き抜く手術は、100年以上も前から行われてきました。この治療法は、皮膚に数カ所の切開が必要なのと、術後の出血や神経障害のリスクが比較的大きく、基本として入院加療となるため、医療機関側が安易に治療に進まない傾向にありました。患者さん側にも、そこまでして治療しなくても良いという心理がはたらき、弾性ストッキングによる圧迫治療をするのみで様子を見るか、治療をあきらめて放置する方が多かったようです。その結果、重症化してからようやく手術に進むケースが目立ちました。重症化してからの治療は、治療後の回復に相当の時間を要する上に、完全に回復しないことがあります。早期に負担のかからない治療が長い間求められてきたのです。
北青山Dクリニックは、治療が結実できずに苦しむ患者さんの悩みを解消するため、根治手術であるストリッピング手術を外来で実施する手法を考案して2000年から積極的に提供してきました。以来、全国から多くの患者さんが治療を希望して来院されています。さらに、高波長レーザーや高周波による低侵襲の治療が普及したことにより、益々多くの患者さんが治療に進みやすい環境が整ってきました。
下肢静脈瘤は、放置すると進行し重症化し得ます。そして、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症、肺塞栓症)の直接の原因ではないものの、それらが発症する危険因子の一つです。必ずしも緊急治療が必要ではありませんが、症状に悩まされている方は早期に治療をすることをお勧めします。

下肢静脈瘤のタイプ別 治療法

それぞれのタイプに対して、以下の治療法が選択されます(どの治療法を主として選択するかは医療機関や担当医によって異なります)。

a. 伏在型静脈瘤
・ストリッピング手術
・血管内レーザー焼灼術(EVLA)
・血管内高周波焼灼術(RFA)
・スーパーグルー治療(CAE)
・高位結紮+フォーム硬化療法、静脈切除術
b. 側枝静脈瘤
・血管内レーザー焼灼術(EVLA)
・静脈切除術
・フォーム硬化療法
c. 陰部静脈瘤
・フォーム硬化療法
・静脈切除術
d. 網目・クモの巣静脈瘤
・体外(経皮的)照射レーザー
・フォーム硬化療法
①保存的療法(圧迫療法)

足全体を圧迫することによって、静脈の還流を助け、血液の循環をスムーズにします。弾性包帯や弾性ストッキングによって行います。

医療用弾性ストッキングとは、伸縮性に富み、その圧により血流を助ける作用を持ったストッキングです。

弾性ストッキングは、薬局などでも販売していますが、病院で受診し、的確なサイズと圧の弾性ストッキングを着用することで、高い効果を得ることができます。

弾性ストッキングは、足のだるさ、むくみ、こむら返りなどにも大きな効果を発揮します。履くのが大変ですが、セルフケアができるという利点があります。下肢静脈瘤の予防、術後対策には、効果的な治療方法です。

しかし、弾性ストッキングを着用することによって、下肢静脈瘤が完治することはありません。根本的な原因である血管の治療まではできないのです。あくまでも下肢静脈瘤の予防、進行の防止、術後の再発防止などのために用いられます。

②硬化療法(フォーム硬化療法)

患部である静脈の中に硬化剤を注射して、皮膚の上から圧迫して血管の内側の壁をくっつけたり、血管を血栓で詰めてしまったりする治療法です。

患部である静脈が閉塞すると、血管は退化し、やがて組織に吸収されて消えてしまいます。

硬化療法は、注射による施術ですので、手術のような傷を残しません。体への負担が少ないのが特長です。治療時間も短く、初診の際でも治療を受けることができるほど手軽ですが、治療後数週間の圧迫が必要です。

しかし、太い静脈瘤には有効ではない、再発率が高い、炎症後の色素沈着がしつこく残る、という欠点があります。

最近はフォーム硬化療法という、硬化剤を空気と混ぜで泡沫化させて行う新しい方法が普及しており比較的大きな静脈瘤でも対応することができるようになっています。

副作用として、硬化剤によりつくられた血栓が、静脈内を通り心臓から肺に流れてしまう可能性があるということです。そのため硬化剤の投与に関しては、経験の豊富な医師が慎重に投与量や投与部位を選択する必要があります。

軽症で細い静脈瘤の治療だと、さほど問題はありませんが、重症および大きな静脈瘤の場合、硬化療法後に相当の血栓が発症して炎症が誘発されることが多く、その後、色素沈着が多かれ少なかれ必発します。また、多毛・潰瘍を発症してしまうこともあります。それらは時間はかかりますが通常は回復します。

③高位結紮(けっさつ)術

静脈瘤の発生源である鼠径部の深部静脈と表在静脈の移行部を縛って、血管を部分的に切除し(取り除き)、断端を縛って(結紮)、血液の逆流を止める治療方法です。

局所麻酔を施した後、足の付け根部分を切開し、患部である静脈を長さ5cmほど取り除いて、断端を縛り、静脈瘤を作っている血管を切り離します。

切開部分の傷は、数㎝と小さく、局所麻酔で行うため、日帰りによる治療が可能です。

しかし、高位結紮術のみの治療では、下肢静脈瘤が十分に治らなかったり、再発の危険性が非常に高かったりするのが、デメリットです。

そのため、静脈を縛る場所を増やしたり、硬化療法と併用したりするなどして治療成績の向上を図りますが、それでも再発のリスクは相応にあります。

④ストリッピング手術

弁の壊れた静脈を、引き抜いてしまう手術です。

足の付け根と足首の2か所を切開して、悪くなった血管の中に、手術用ワイヤーを通します。そうして、血管と糸で結び、ワイヤーを用いて、弁の壊れた静脈を引き抜いてしまいます。

下肢静脈瘤の最もスタンダードな根治的治療として、100年以上も前からおこなわれてきました。下肢静脈瘤の中で、最も太い瘤を形成する伏在型静脈瘤に特によく行われた治療方法でした。

以前は全身麻酔や、下半身麻酔(腰椎麻酔、硬膜外麻酔)で行われ、1~2週間の入院を必要としていました。 その後、入院期間を短縮する医療機関が増え、4~5日の入院で治療が可能となり、さらに静脈麻酔やTLAという特殊な局所麻酔により、現在は日帰り手術を実施するところが増えています。

ストリッピング手術は、伏在型静脈瘤に対する根治治療と定義され、血管内レーザー治療で対応できない大きな静脈瘤にも対応できる点で、とても有効な治療方法です。しかし、術後に痛みが生じたり、出血や神経障害などの合併症が起きるリスクが相応にあります。

また、手術で加えられた傷の修復反応で血管新生が起き、その血管新生によって静脈瘤が新たに発生してしまう再発の形が最近では注目されています。

⑤ラジオ波(高周波RF)治療

◆ 血管内高周波焼灼術 ◆

血管の中に、カテーテルを挿入し、高熱によって血管内腔を閉鎖して、逆流を止める治療法です。血管内を閉塞させるという点では、血管内レーザー焼灼術と同じであり、RF(高周波)血管焼灼術も日帰り治療が可能です。

RF(高周波)は、レーザー治療より前から行われていましたが、逆流血管の閉塞率が低いという弱点がありました。その後、改良が加えられ、血管の閉塞率が改善し、保険適用レーザー(980nm)と同等になったため、2014年7月から保険適用になりました。

RF(高周波)の利点は、術後疼痛が少ない点ですが、欠点は大きくは2つあります。1つは、血管径の比較的大きなものは、レーザーに比べて閉塞率が低い可能性があることです。もう1つは、逆流部分が短い静脈瘤や不全穿通枝などへの焼灼が困難であるという点です。

RF(高周波)はレーザーに比べて、治療できる静脈瘤の適用範囲が小さいといえますが、術後疼痛が少ない点と手術時間が短時間であることから、今後の普及が期待されます。

⑥レーザー治療

静脈にレーザーファイバーを挿入して治療をおこなう「血管内レーザー焼灼術」と、「体外照射レーザー治療」の2つがあります。

◆ 血管内レーザー焼灼術 ◆
血管内レーザー焼灼術では810nm、980nm、1320nm、1470nm、2000nmの波長をもつレーザーが用いられます。おもに伏在静脈瘤のような、血管が足の表面に浮き出てボコボコになってしまうタイプのものに適用されます。

逆流防止弁が壊れ、静脈血が逆流を起こし、静脈瘤となってしまった血管に、極細のレーザーファイバーを挿入し、静脈の内側を熱で焼き、患部の血管を閉鎖させます。塞がれた静脈は、その部分に血液が流れなくなり、そのあと数カ月かけて繊維化し、体組織に吸収されて消えてしまいます。

ストリッピング手術と同様の効果がありながら、傷口がなく、出血が少ない身体に負担の少ない治療です。

下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術が行われるようになった当初は、手術後の長期データがないこともあり、この治療を行う施設は限られていました。現在では、世界中で数多くの血管内レーザー焼灼術が行われ、術後10年ほどのデータも蓄積されてきており、その安全性と有効性も確認されています。

2011年から980nmのレーザーが、2014年5月には1470nmのレーザーが保険収載され、治療を受けられる機関は、どんどん増えています。

現存するレーザーの中では2000nmの波長が最も長く、水分の吸収は良く、組織との反応が優れていると考えられています。このレーザーによる治療は、照射熱量は最小、手術時間は最短、治療成績も良好です。そのうえ、合併症も少なく、患者さんにとって、最も負担が少なく効果的な治療であるといえるでしょう。

◆ 体外照射レーザー治療 ◆
下肢静脈瘤の一種で、足に発生する赤や青色の細かい血管拡張を「網目状静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」といい、「レッグペイン」とも呼ばれています。これらの静脈瘤は、立体的に大きくは浮き出てきません。しかし、赤や青色の細かい血管が広がり、見た目に気持ち悪いと思われる方が多いようです。むくみや痛みなどの症状を伴うこともあります。

こうした静脈瘤の治療には硬化療法がおこなわれてきましたが、近年、体外照射タイプ(ロングパルスYAGレーザー)が登場してきました。

ロングパルスYAGレーザーは、血管の壁を変性し、収縮させる性質を持っているレーザーです。このレーザーを、一定間隔で断続的に照射(パルス照射)することで、治療部位の温度を高温にせず、血管を縮ませ、閉鎖させることができます。

体外照射タイプ(ロングパルスYAGレーザー)治療は、一般的には30分~1時間程度で、終了後はすぐに帰宅することが可能です。体に優しいこの治療は合併症を最低限に抑えるために複数回の照射に分けて行われることが一般的です。

⑦スーパーグルー療法(CAE)

グルー治療

瞬間接着材(シアノアクリレート)の医療材料(スーパーグルー:オクチルシアノアクリレート、nブチルシアノアクリレートなどがある)を用いて治療対象となる血管を閉鎖します。手法としては、血管内高周波焼灼術や血管内レーザー焼灼と同様に局所麻酔でカテーテルを挿入し、それを介してスーパーグルーを投与します。血管内焼灼術と同じように局所麻酔で実施できます。複数の会社がこの治療キットを出しており、「Venasheal」、「Variclose」などと命名しています。正式名称は(CAE:Cyanoacrylate Embolization シアノアクリレートによる血管閉塞術)になります。当クリニックでは正式名称に倣って、「静脈を閉塞させる」意味で「Venocloseベノクローズ」と呼んでいます。

麻酔が最小限で済むので治療当日入浴ができたり、中等度までの静脈瘤であれば治療後の圧迫が不要であったり、治療後の生活の質が最も保たれた新しい治療法です。

レーザーや高周波などの「熱を出す血管内治療」に対して「熱のない血管内治療」として国際的に注目を浴びていますが、重症例や複雑な静脈瘤には対応できない場合があります。


下肢静脈瘤と日帰り手術

すべての下肢静脈瘤は、日帰りで治療することができます

ストリッピング手術下肢静脈瘤の古典的根治手術であるストリッピング手術(静脈抜去手術)は、今から100年以上も前にBabcock医師により確立されました、以来長らく、伏在静脈の弁不全による典型的な下肢静脈瘤の根治手術として同手術は実施されてきました。しかし1990年代までは1-2週間の入院が必要で、そのために、患者さんは治療を受けるのを躊躇する傾向にありました。

その後、抜去部位の範囲の縮小や、静脈麻酔・TLA麻酔の導入により、日帰りストリッピング手術が実施されるようになりました。しかし、実際に実施できる医療機関は限られていました。そして、ストリッピング手術では切開が1-2か所は必要で、血管を抜去することによる神経障害の発症のリスクもあるために、より低侵襲の治療が求められてきました。

レーザーによる血管内治療2000年初頭から高周波やレーザーによる血管内治療が実施されるようになり、その後、機器の改良が重ねられ、身体への負担が軽減されながらも従来のストリッピング手術以上の治療効果が期待できるレーザーや高周波が登場しています。

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ただし、いまだに、重症例や先天性の静脈瘤など例外的などでは、血管内治療の適用にならずに入院加療で対応する医療機関が殆どです。北青山Dクリニックでは、1990年代後半から下肢静脈瘤の日帰り根治手術を実施してきた経験を生かして、重症例あるいは先天性で治療抵抗性の難治例に対しても、治療法・麻酔法を工夫することで日帰り治療を実践しています。

今や、下肢静脈瘤の治療は外来治療として通院治療で問題なく実施できるようになりました。そして、早期に治療をすればするほど、回復も早く完全に症状から回復できる可能性が大きくなります。治療に伴う時間的・身体的負担が少なくなった現在、進行性の疾患である下肢静脈瘤は早期治療に心がけるべきではないでしょうか。


下肢静脈瘤の治療に向けて

治療を受ける前に欠かせないことは、言うまでもなく、正確な診断による適切な治療法のプラン二ングです。下肢静脈瘤の治療は、静脈瘤の種類に応じて異なります。適切な治療が選択されないと治療効果がないばかりか、治療によって逆に症状が悪化してしまうということになりかねません。

まずは、経験豊富で信頼のできる血管外科医の診察と血管エコー検査を受けることが必須になります。診察・検査後の医療面談で診断内容や治療法の説明が理解できるかどうかもポイントになります。説明がわかりにくいときや、説明内容に納得ができないときは遠慮なく医師に質問すべきです。医療行為ではインフォームドコンセント(説明と同意)が極めて大切です。

例えば、血管内焼灼術の方針で治療が進められることが確定したら、血液検査で、感染症、貧血、凝固異常、肝機能障害、腎機能障害、糖尿病などが背景にないかを確認します。また、基礎疾患を持っていないか、麻酔や抗生物質にアレルギーはないか、常用薬は何かなど治療の障害が存在しないかを確認します。

基本的に血管内焼灼術が実施できない方は極めて稀ですが、血栓症や感染症を引き起こす可能性が大きい方などには、下肢静脈瘤の治療の前に、先行して別の治療が必要になることがあります。

治療直前では、コンディションを崩さないよう注意が必要です。手術前は特に規則的な生活に心がけ睡眠もしっかり確保してください。血管内焼灼術を受けたその日は入浴ができませんので、予め清潔な状態で治療に望まれることも大切でしょう。


下肢静脈瘤の手術を受けた方が良い理由

◆ なぜ手術をした方がいいのか

手術を受けた方が良い理由は、以下のようにまとめられます。

1.壊れた末梢の拡張血管、及び弁不全をきたして深部静脈を流れる血液を末梢に逆流させている伏在静脈は正常な血液還流の点で機能していない。

静脈が拡張する理由 2.弁不全により一旦逆流した血管や拡張して瘤(こぶ)のように膨らんだ血管は、放置して治ることはなく徐々に悪化していく。

3.悪化していくだけでなく、正常な血管にも静脈瘤が広がっていく。

4.進行すると難治性の下腿潰瘍や血栓症など重篤な症状に陥る可能性がある。

5.レーザーや高周波による血管内治療は体への負担が少なく入院が不要で手術後も日常生活に速やかに復帰できる。また、従来の根治的治療に勝るとも劣らない治療成績が期待できる。

6.早期に治療をすればするほど、回復も早く完全に症状から回復できる可能性が大きい。

◆ 下肢静脈瘤を放置するとどうなるか

下肢静脈瘤を発症してしまった場合、そのまま放っておいて自然に治るということは基本的にはなく、進行の速度に個人差はあるものの、通常は徐々に悪化します。極めてまれに血管に血栓ができて静脈瘤自体は改善することがあります(1万例に3例 程度)が、非常に強い痛みを伴います。専門医による治療を受けなければ、根治することはもちろんのこと、改善することはないといってよいでしょう。
下肢静脈瘤を発症したとしても、それが直接的な死因になることや、足が壊死を起こすということも、足を切断しなければならないということもありません。進行はゆっくりであることが殆どなので、実際は放置されがちです。しかし、進行し、重症化すると、痛みが生じたり、皮膚に潰瘍が発生して治らなくなったり、 ひどい血栓症に陥ったりします。 血液のかたまり(血栓)が肺動脈を塞ぎ、深刻な状況を引き起こす肺塞栓症について、 下肢静脈瘤が直接影響を与える場合もあり得ますが、それはごくまれなケースです。 ただし、下肢静脈瘤にかかっている人は、 深部静脈に負担がかかり、そこに血栓ができやすいという報告もあります。その血栓が肺動脈を詰まらせてしまうのが、いわゆるエコノミークラス症候群です。つまり、エコノミー症候群の間接的な原因にもなり得ると言えます。



監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴 1993年 東京大学医学部 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会日本血管外科学会日本消化器外科学会
日本脈管学会日本大腸肛門外科学会日本抗加齢学会

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